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吃貨美味探訪記 No.163(日本編その50)「台湾の麺といったらこれ──牛肉麺」

 新年快楽! 新年1回目がちょうど1月1日にあたってしまった(テレビの正月番組と同じで、書いたのは年末だが)。元旦とはいえ、いつもどおり淡々と。前回の日本編の続きで、台湾料理店で昼食に食べた、台湾のB級グルメの一つである牛肉麺(ニゥ ロゥ ミェン)をご紹介する。

スープの色が赤いのは

 前々回の日本編で取り上げた魯肉飯(ルー ロゥ ファン)ほどではないが、台湾の牛肉麺も最近は日本でもそこそこ知られるようになってきた。

以前に池袋で食べた蘭州拉麺 ちなみに、同じようにこのところ東京でも食べられる店が増えてきた蘭州拉麺(ラン ヂョウ ラー ミェン)も、地元の中国・蘭州では、単に牛肉麺と呼ばれているようだ。

 蘭州の牛肉麺が澄んだ色のスープであるのに対して、台湾の牛肉麵のスープは一般的に赤っぽい。これは、醤油ベースのスープに豆板醤が使われているからのようで、醤油で煮込む料理法を「紅焼」(ホン シァオ)と呼ぶことから、紅焼牛肉麵とも呼ばれている。台湾では、それに加えてトマトを入れる店もあるらしい。そして、今回食べた牛肉麺がこちらである。

真ん中に見えるのは高菜と香菜(パクチー)で、ほかに青菜とニンジンも入っている

この店では平打ち麺のみだったが、本家の台湾では麺の種類を選べるらしい 豆板醤が使われているためスープがピリ辛で、けっこう色が赤いので、もしかしたらトマトも使っているかもしれない……と、メニューをよく見たら、ピリ辛トマトスープと書いてあった。麺は平打ちで、よく煮込まれた牛肉は口に入れるとホロホロと崩れていく。

 3年ちょっと前に台湾旅行した際にも、現地で牛肉麵を食べているのだが、なぜか写真に撮っていない。画像が残っていないと記憶も戻らず、どんな味だったのか覚えていない。

 ところで、牛肉麺の台湾語の読み方を調べているうちに(グー バー ミー)、そういえば「肉」の漢字の音読みはなんだろうと思い、ネットで調べてみた。すると、実は「にく」という読み方は訓読みではなく、音読みだった。訓読みでは「しし」と読むらしい。

 ご存じのとおり、音読みというのは、昔の中国の発音をもとにした漢字の読みで、その漢字が日本に入ってきた時代や地域によって呉音、漢音、唐音、宋音などの違いがある。

 肉の普通話(中国の標準語)の読み方は「rou ロゥ」で、「にく」とは似ても似つかないが、上海を中心とした地域で話されている呉語では「nyok ニョッ」(kは発声しない)で、「にく」とよく似ている。漢字の音読みの一つである呉音は、その昔、この呉語が話されている地域の漢字音から来ている。つまり「にく」という言葉は、もともとは日本語ではなく、中国のこのあたりから来た言葉のようだ。

 閑話休題。さて、今回食べた台湾料理店では、台湾の料理だけではなく台湾スイーツも揃っていたので、両方を一緒に楽しめてよかった。まだしばらく台湾旅行には行けそうにないので、今度はディナータイムにまたこの店に来て、料理だけでも台湾の雰囲気を味わえればと思っている。
おまけカット。台湾旅行で有名観光地の九份に行った際の一枚。大勢の観光客が脇を通り過ぎてもまったく動じない

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。