吃貨美味探訪記 No.167(日本編その52)「久しぶりに食べてみた──方便麺(インスタントラーメン)」
- 2022/03/05 00:00
- 佐久間賢三
いつかネタがなくなった時にやろうと思っていた食材を、ついにやる時がきた。いつでもすぐに買いに行って食べられる中国の方便麺(ファン ビェン ミェン)である。中国食材店に行くと、何種類もの袋入り、カップ入りのインスタントラーメンが売られているが、そこで選んだのは、康師傅の「紅焼牛肉麵」。中国に住んでいたときにときどき食べていた懐かしい味だ。
麺の味に妙に懐かしさを感じて
康師傅(カン シー フー)は台湾の食品メーカーで、中国ではインスタント食品や飲料を生産、販売している。インスタントラーメンも数多く出していて、そのなかでも一番好きだったというか、まあこれなら食べられるなというのが「紅焼牛肉麵」(ホン シャオ ニゥ ロゥ ミェン)だった。
中国に住んでいた時は、スーパーで5袋入りのパックを買っておいて、ご飯を炊くのが面倒だったり時間がなかったりした時は、栄養面を考えて自家製の冷凍野菜とネギ、乾燥わかめなどを入れて食べていた。
ちなみに中国のインスタントラーメンのほとんどは、袋入りだろうがカップ入りだろうが、どちらもお湯を注ぐだけで食べられる。方便麺の方便は、「嘘も方便」から来ているのではなく、中国語では「便利な」という意味である
このコラムのネタのために外に食べに行く暇がなく、今回はインスタントラーメンにしようと、池袋の中国食材店に行くと、「紅焼牛肉麵」のほかに、これまで食べた記憶がない「酸辣牛肉麵」というのがあったので、その2つを買うことにした(一つ216円)。
まずは「紅焼牛肉麵」を食べてみる。麺と一緒に乾燥野菜やスープの素を入れて、お湯を注ぐ。丼だとお湯の適量がよく分からず、ちょっと入れすぎてしまったかもしれない。で、待つこと3分……だよな、と思って袋を見たら、どこにも説明書きがない。3分という文字どころか、お湯を注ぐといった説明もない。まあ、そんなの説明するまでもない、好きなように食べてくれということだろう。
律儀に3分待って食べてみると、やっぱり少しスープが薄いような気がする。実際のところは、そもそも7、8年ぶりに食べるので、これが薄いのかどうかも分からない。スープは濃厚な醤油系といったらいいのだろうか。辛いというわけではないが、日本のインスタントラーメンに比べるとスパイスが効いている。
麺のほうはというと、不味いというほどではないが、少なくとも美味くはない……。ただ、スープとは違い、この麺の味に妙に懐かしさを感じたのは不思議である。
というわけで、中国の懐かしい味を食べたいという人以外には、あまりお薦めできない味だった。
そんなこともあって、あまり期待しないで食べてみた「酸辣牛肉麺」。酸辣(スァン ラー)は文字どおり「酸っぱ辛い」という意味で、スープの素以外に、後入れ用に黒酢の小袋が入っていた。
実は、こちらはそこそこ美味かった。前回の反省からお湯は少なめにして食べてみると、黒酢の酸味とピリ辛がよく合う。黒酢の風味が気にならない人なら、けっこう美味しく食べられると思う。日清カップヌードルでいうところの、チリトマト的な存在なのかもしれない(味は似ていないが)。
そして、スープの酸っぱ辛さが麺の味を覆い隠してくれるのか、麺の不味さがほとんど気にならない。食べ進めていくと、小さく刻まれた乾燥香菜(シァン ツァイ=パクチー)が時おり口の中に入ってきて、味に変化をつけてくれる。こちらはまあ満足の味だった。
しかし、やっぱり日本のインスタントラーメンやカップ麺の味には敵わないなあというのが、今回の正直な感想である。
佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。