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吃貨美味探訪記 No.169(日本編その53)「西川口の中国料理店街で食べた懐かしい味──東北料理」

 中国の東北料理は、いわゆる「中国四大料理」にも「八大料理」にも入っていないが、それでも存在感のあるジャンルの一つといえる。先日、埼玉県の西川口で久しぶりに東北料理を食べる機会があった。その懐かしい味とは──。

形は似ていても、日本のものとはまた違った味わい

 中国で東北地方というと、中国東北部にある黒龍江省、吉林省、遼寧省の3省を指す。それぞれの省にある都市のうち、日本でも比較的よく知られているのは、ハルピン市(黒龍江省)、長春市(吉林省)、大連市(遼寧省)あたりだろうか。

 先日、友人に誘われて西川口駅で中国料理を食べることになった。西川口駅といえば、駅の西口に中国人経営の中国料理店が数多くあり、今では「西川口チャイナタウン」という名称もあるほどである。

 どの店に入るのかまったく決めていなかったのだが、このエリアで多いのは東北料理の店と福建料理の店のようだったので、昔懐かしい東北料理の店にすることにした。

 入った店は、土曜日の午後6時前という早い時間ということもあってか、広い店内はガラガラだったが、時間がたつうちに次々とグループ客が入ってきて、満席とまではいかないものの、いつの間にか店内は賑わいをみせていた。

 というわけで、まずは前菜として頼んだのがこちら。

 これはジャガイモを千切りにした冷菜和え物の「涼拌土豆絲」(リァン バン トゥ ドウ スー)である。涼拌は冷たい和え物、土豆はジャガイモ、絲は細い糸状のもの、つまり千切りという意味で、合わせて「ジャガイモの千切り和え物」となる。

 この涼拌土豆絲、特に東北料理というわけではないのかもしれないが、中国の東北料理店ではよく見かける料理である。意外にジャガイモがシャキシャキしていて、ピリ辛の味わいが食欲を増進してくれる。

 そしてお次が、これまた東北料理には欠かせないこちら。

 これは羊の肉を串焼きにした「羊肉串」(ヤン ロウ チュアン、東北方言っぽく言うとヤン ロウ チュアール)で、独特のスパイスが効いていて、日本の串焼きとはまた違った味わいになっている。ビールが何杯でもいけそうである。

 この羊肉串、今はどうだか分からないが、かつて筆者が住んでいた、以前の深圳であれば、夜になると道端に怪しげな簡易屋台が出てきて、煙をもうもうと立てながら売っていたものである。

 そしてもう一つが、これがなくては東北料理は始まらないというこれ。

中身の餡はいろいろ選べるが、この時食べたのは、比較的ポピュラーな豚肉とセロリ

 言わずと知れた「水餃子」である。中国語で言えば「水餃」(シュェイ ジァオ)なのだが、実際のところは、中国では「餃子」(ジァオ ズ)といえばほとんどが水餃子なので、わざわざ水餃などと言う必要はない。

 すでにご存じかもしれないが、日本の餃子と違って皮が厚く、これだけで主食になる。つまり、餃子ライスというのは中国では存在しない。

 筆者は東北地方に住んでいたわけではなく、行ったことすらない。しかし、かつて長く住んでいた南部の都市・深圳は移民の街で、東北地方から移り住んできた人も多く、東北料理店が多かった。そのため、会社の同僚たちと昼食などでよく食べに行ったものである。

 なので、東北料理は筆者にとって昔懐かしい味なのである。

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。