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吃貨美味探訪記 No.176(マレーシア編その24)「名前は同じでも全く別物の料理だった──福建麺」

 今から20数年前に、マレーシア半島北西部にあるペナン島の屋台街で、ある麺料理を食べた。その美味さが忘れられず、それから10数年後になって、現地の友人とご飯を食べに行った時に、それが食べたいとリクエストしてみた。ところが、出てきたのは、ペナン島で食べたものとは全く違うものだった。その麺料理の名前は「福建麺」という。

これが福建麺?

 それは、マレーシアに初めて行った1995年だったか、はたまた98年の時だったかはっきりしないのだが、ペナン島に行った際、現地の有名な屋台街のガーニー・ドライブ(Gurney Drive)で、福建麺なるものを食べた。福建麵は標準中国語で読むと「フー ジエン ミェン」だが、現地では福建語読みの「Hokkien mee(ホッキエン・ミー)」と呼ばれている。

 エビの出汁が利いた澄んだスープに麺が入り、具にはエビやつみれのようなものが乗っかっていたと記憶している。残念ながら写真は残っていないが、このスープがとにかくうまく、忘れられない味となっていた。

 それから10数年がたち、何度目かのマレーシアの時に、マレーシアの首都、クアラルンプールで再び食べる機会が訪れた。現地の友人が海鮮料理の店に連れていってくれたので「福建麺」をリクエストしてみたのである。

現地の友人に連れてもらった店。RESTORANは、マレー語でレストランのこと

写真右下はスペアリブ

 さまざまな海鮮料理が出てくるなか、ついに出てきた福建麺。が………、出てきたのは、ペナン島で食べた記憶のあるものとは似ても似つかぬものだった。

 お椀に入ったスープ麺ではなく、デカい皿に盛られた焦げ茶色の焼きそば。頼み間違えたかもしれないと思い、「これが福建麺?」と聞くと、「そうだよ」という返事。ペナン島で食べたものの名前を間違えて覚えてしまっていたのか?

 ちょっと困惑したが、自分からお願いして頼んでもらったものなので、そんな素振りは見せず(に済んだと思うが)、他の料理とともに美味しくいただいた。

食事のあと、別の店で食べたフルーツかき氷。黒いのは薬草のゼリー その時はそのままにしてしまったのだが、それからまた数年後、その時の福建麺のことを思い出し、いったいあれはどういうことだったのかと、ネットで検索して調べてみた。すると、実はこういうことだった。

 簡単にいうと、ペナン島の福建麺と、クアラルンプールの福建麺は全くの別物だったのである。しかも、その他にシンガポールにも福建麺はあり、そちらも炒め麺だが、色は白っぽい。さらに、ペナン島で食べた福建麺はスープが澄んでいたと記憶していたのだが、ペナン島の福建麺はピリ辛の赤いスープだった。

 20年以上前のことなので、他の食べ物の記憶とゴチャゴチャになっているのかもしれない。はたまたもしかしたら、澄んだスープの福建麺も、ネットには書いていないだけで、実はあるのかもしれない。あれからペナン島には行っていないので、機会があったらまたあの屋台街に行って、ぜひ確認したいと思っている。
おまけカット。中国では広東省で行われているが、レストランでの食事前に食器を洗う儀式(広東省では一人ひとりがお茶で洗う)。マレーシアでやったのはこの時が初めて

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。