吃貨美味探訪記 No.178(マレーシア編その25)「生姜汁の自然な甘さと喉越しの柔らかさがたまらない──豆腐花」
- 2022/08/20 00:00
- 佐久間賢三
前回の日本編でアメ横で食べた豆腐花を取り上げた際、以前にマレーシアでも食べたことがあると書いたので、過去の写真を探してみた。すると、マレーシアで豆腐花を食べたのは、5年前の2017年の年末、やはり結婚式に呼ばれてイポーに行った時のことだった──。
新婦の実家で繰り広げられる結婚の儀式
マレーシアでの知り合いの親戚の女の子が結婚するというので、暮れも押し迫った12月27日、マレーシアに到着した。結婚式および披露宴が行なわれるのは、なんと12月31日。とはいえ、日本とは違ってマレーシアでは大晦日や元旦はそれほど重要な日ではなく、とはいえ休みではあるので親戚たちが集まりやすいということで、この日にしたのだろう。
結婚式の前夜は、新郎、新婦それぞれの実家で晩餐会が開かれ、それぞれの家族や親戚、友人が集まって前夜祭を行なう。ケータリングで運ばれてきた料理を食べながら、夜遅くまでワイワイガヤガヤと賑やかである。
そして翌朝、8時ごろに新郎が乗った車が新婦の実家にやってくると、儀式が始まる。
新郎が到着しても、家の門またはドアの鉄門はしっかりと閉められ、新郎と付添の男性たちは中に入ることができない。新婦やその両親の姿も見えず、対応するのは新婦の付添の女性たち。鍵のかかった出入り口をはさんで、中に入れてもらいたい新郎および付添の男性たちと、そう簡単には中に入れてあげない新婦の付添の女性たちが、丁々発止を始める。
女性陣は男性陣に向かって「紅包(ホン バオ ご祝儀のようなもの)をちょうだい!」とか、あれをしろこれをしろとさまざまな要求をして、新郎を含めた男性陣たちがあれこれ文句を言いながらもそれに応えていくと、ようやくドアが開かれ、家の中に入れてもらえる。
家には入れてもらえても、今度は花嫁がいる部屋のドアは固く閉められ、中に入ることができない。ドアの前で、新郎が中にいる新婦に向かって、さまざまな愛の言葉や誓いの言葉を叫び、それで初めてドアが開かれ、ついに新婦が新郎を迎え入れる――という展開。とにかく賑やかで楽しい儀式である。
それからはまた、家の中で新婦の両親や親戚(およびご先祖様)を相手にさまざまな儀式を行なっていくのだが、書くと長くなるので、それはまたいつか。
日本の豆腐とは違う滑らかさ
というわけで、本題の豆腐花である。
午前中には儀式が終わってしまい、夜の披露宴までにはまだだいぶ時間があいている。というわけで、午後4時ごろ、おやつを食べに何人かで車に乗って街の中心部に出た。その時に食べたのが豆腐花だった。
イポーではけっこう有名な店らしく、店の前で軽く行列。店頭では、店員さんが大きな寸胴に入った豆腐をお玉で丁寧にすくい、お椀の中に入れていく。そうして出てきたのがこれである。
一番スタンダードな生姜汁入りの豆腐花。豆腐は温かく、生姜汁はほんのり甘く、自然な味わいが口の中に広がり、喉越しは滑らか。幸福感が食道の中を伝わっていく。日本で食べる豆腐とは柔らかさが違う。この時に食べたのは汁をかけただけのシンプルなものだが、ピーナッツとゴマ、あんこ、薬草ゼリーなどをトッピングすることもできる。
塩味の豆腐花も悪くないが、やっぱり豆腐花は甘いほうが、食べて満足感が高いように思う。
最後にまた結婚式について。前述の儀式は、新婦側の親戚でないと見られない(通常、新郎側から参加するのは付添の男性たちのみ)。今年10月にこの親戚のうちの一人の結婚式があり、参加する予定でいるのだが、結婚するのは女の子。またこの儀式を見ることができるので、非常に楽しみにしている。
佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。