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吃貨美味探訪記 No.180(マレーシア編その26)「マレーシア式屋台しゃぶしゃぶ?──Lok lok」

 イポーの夜市は以前も取り上げたことがあるが、今回もまた、夜市でお馴染みの食べ物をご紹介する。前回(吃貨美味探訪記 No.164(マレーシア編その18)「何でも美味しく食べるほうだが、これだけは……──榴蓮糯米飯」)は果物の王様ドリアンともち米、そしてココナッツミルクという、日本人にとっては思いも寄らない取り合わせの食べ物だったが、今回取り上げるのは、日本人にとってもう少し馴染みやすいものである。

大勢で食べるから美味い?

 イポーのいつも泊まる現地の知り合い家の近くでは、毎週月曜日の夜に夜市、Pasar malam(パサー マラム)が開かれる。夜市では雑貨や衣服、野菜などの食品を売る屋台が並ぶのだが、やっぱりお楽しみは食べ物の屋台である。

夜市は夕方明るいうちから始まり、暗くなってからが一番人出が多い

 ある時、そこに、やけに横に長い屋台があるのを見つけた。そこにズラリと並ぶのは、串に刺さったさまざまな種類の具材。これは串焼きではなく、Lok lok、つまりマレーシア式屋台しゃぶしゃぶの具材である。Lok lokの読み方は、語尾のkは発音するつもりで実際は発音せず、「ロッロッ」のような音になる。ちなみに中国語だと「碌碌」または「樂樂」と書くようだ。

 さて、このLok lok、野菜系の具材はまだいいのだが、右の写真を見ても分かるように、肉・練り物系の串は日本人にとっては正体不明のものも多い。これらの串のなかから、自分の好きな具材の串を取って、手前にある小さな釜というか鍋のようなものに突っ込んで、自分で湯がくようだ。

煮えたぎる湯の中に串を突っ込んで湯がく 日本だったら、屋台の手前にあるスペースに缶ビールなど置いて、茹でた具材を備え付けのタレにつけて、ビールを飲みながら串にかじりつくところだが、そういうシステムではないらしい。自分で具材を茹でたら、備え付けの発泡スチロール容器に入れて、自分でタレをかけてお持ち帰りにするようである。

 実際に現場で見ているのに「〜ようだ」とか「〜のようである」などと書くのはいささか無責任だが、実は夜市では食べたことがない。というのも、夜市には現地の知り合いたちといつも一緒で、こちらが写真を撮ったりしているうちに、彼らがさっさと先に行ってしまったからである。

 その代わりというわけではないが、別の時にLok lokの店に食べに連れていってもらう機会があった。店というより、シャッターを開けた車庫のような空間だった。

 そこにドラム缶が立ててあり、それをテーブル代わりにして、湯がいた具材をタレにつけて食べる。タレを入れた発泡スチロール容器が5つあるが、赤っぽいのがチリソースで、あとは同じ種類だったと思う。

 で、お味のほうだが、実はよく覚えていない。もう何年も前のことというのもあるが、特別美味いとかでもなく、それほど特徴のある味ではなかったからではないかと思う。それよりも、みんなでドラム缶を囲んで串をかじりながら、ワイワイガヤガヤやって楽しかったことのほうをよく覚えている。

 結局、鍋物も似たようなところがあるが、こういうセルフ調理系の料理というのは、料理の味そのものよりも、そういったみんなで楽しむことのほうが重要なのかもしれない。

 さて、マレーシア編のネタがそろそろ尽きそうになったところで、ようやくまたマレーシアのイポーに行く機会がきた。これまでは連れていってもらった店で出てできた料理を食べるだけだったが、今回は新たなネタを探していきたいと思う。
おまけカット。イポーの旧市街と新市街の間を流れるキンタ川。橋の向こうが旧市街で、鉄道駅や老舗飲食店などがある

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。