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吃貨美味探訪記 No.185(出張地元メシ編その2)「愛媛県南部、南予地方の郷土メシ──愛媛県松山市・ひゅうが飯&さつま飯

 今回は四国の愛媛県松山市に行った時の食べた料理について。昼食で食べた、愛媛ならではの二つの郷土料理を取り上げる。似ているようでまったく別のこの二つ、四国なのになぜか九州の地名が付けられているのも、また不思議である。なお、前回から始まったこのシリーズを「出張グルメ編」としていたが、よく考えてみたら筆者はグルメではないので、今回から「出張地元メシ編」とした。

いったいどの食べ方が正しいのか

 出張先との約束の時間が午前中の比較的早い時間で、東京から朝一番の便で行っても間に合わないため、前日入りした。松山市には、前回取り上げた鹿児島市と同様、中心部には路面電車が走っている。取材は翌日なので、これに乗ってあちこち回ってみることにした。

市内中心部を走る路面電車「市内線」(または市内電車)。山の上に見えるのは松山城

 その前の腹ごしらえとして昼食に食べたのが「ひゅうが飯」。松山の美味いものを事前に調べていなかったのだが、入った店のオススメがこれだったので頼んでみた。

 メニューの説明書きによると、真鯛の刺身をご飯の上に乗せ、卵とだし醤油をかけて食べるとある。本場では刺し身醤油を使うが、その店ではだし醤油を使っているという。そこで、刺身と海苔、わさびをご飯の乗せ、生卵とだし醤油をよく混ぜて上からかけた。卵かけご飯の豪華版のようなものである。

 ところが、メニューの写真をよく見たら、卵の黄身がそのまま刺身の上に乗っかっていて、そこにだし醤油をかけている。どうやら順番を間違えてしまったみたいだが、どうせ卵の黄身をくずしてから食べるので、味に違いはないだろう。

 その後、いろいろネットで調べてみたら、ひゅうが飯は愛媛県南部の南予地方にある宇和島周辺の郷土料理で、溶き卵と調味汁を混ぜたものに刺身を入れて和えたら、熱いご飯の上にかけて食べるとあり、店での説明書きとはやや異なる。刺身の魚はアジやイワシ、鯛、カツオ、マグロなどが多く、特に鯛を使ったものを「宇和島鯛めし」と呼ぶのだという。

 それにしても、いったいどの食べ方が正しいのだろうか。いつか宇和島に出張で行く機会があったら、本場のひゅうが飯を食べてみたいものである。

ひゅうが飯とさつま飯の名前の由来は?

 翌日、午前中の用事が終わり、帰京する飛行機の便の時間までまだたっぷりあったので、市街地で昼食を食べることに。店を探すのが面倒だったので、前日と同じ店に行った。というのも、メニューの中に、他にも食べたい郷土料理があったからである。それがこれ、「さつま飯」である。

前日のひゅうが飯とは違い、天ぷらや小鉢が付いた豪華版

 メニューの説明書きによると、「冷や汁をご飯にかけたら、大葉・板こんにゃく・ネギ等をご飯の上に乗せて食べる」とあったが、メニューの写真ではこれらの具をご飯の上に乗せたところに冷や汁をかけていたので、それに倣うことにした。

大葉、板こんにゃく、ネギ以外に、キュウリの薄切りと刻み海苔、白ごまも付いていた

 さつま飯も、ひゅうが飯と同じく南予地方の郷土料理だそうで、鯛などの白身魚を焼いた身をほぐし、すり鉢で麦味噌と混ぜ合わせ、それに魚で取ったダシを加えたら、その汁をアツアツのご飯にかけて食べるのだという。似たような料理に宮崎県の「冷や汁」があるが、これを食べた(=知った)のは、それから数か月後に宮崎に出張に行った時のことである。

 冒頭にも書いたとおり、ひゅうが飯もさつま飯も、愛媛県の郷土料理にもかかわらず、九州の地名が付けられている。どちらも名前の由来は諸説あるようだが、それぞれ日向(宮崎県)、薩摩(鹿児島)から伝わってきた料理だという説もある。

 愛媛県にはその後、出張で2回行ったが、その度に美味しい地元メシに出会ってきた。その時の話は、いつかまた。
路面電車で行ける道後温泉の本館。想像していたよりちっぽけな建物だった

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。コロナ禍の影響で3年間、海外に行くことができなかったが、ようやくマレーシアに行くことができ、次はどこに行こうかとあれこれ考える日々を送る。