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吃貨美味探訪記 No.188(マレーシア編その30)「マレーシア食い倒れ旅4:魚の香ばしさとあっさりスープがたまらない──魚頭米粉(魚頭ビーフン)」

 マレーシア・イポー2日目。イポーに到着してから初めての朝食は、魚の頭が入った汁入りビーフン「魚頭米粉」(広東語読み:ユー タゥ マイ ファン)。この魚の頭が、香ばしくてたまらなく美味いのである。

マレーシア華人が生み出した料理

 友人宅でたっぷり寝た翌朝、現地の知り合いが車で迎えに来て、いつもどおり屋台が並ぶ食堂に行って朝食。そして、食べるものもいつもどおりお任せだったのだが、どこの屋台で頼んだか分かっていたので、ご飯が出て来る前に、作っているところを見に行ってみた。それがこれである。

 コンロにかけられた鍋の中の汁は白く、そこにペースト状のものを入れている。スープ物だから、おそらく麺類だろう。しかし、具が何なのか、前に並んでいるものを見ても分からない。結局、何が出てくるのかはお楽しみのままテーブルに戻り、いつもどおり朝のコピ(kopi=マレーシアのコーヒー)をチビチビ飲みながら、料理が出てくるのを待った。

 コピといえば、前日の朝、シンガポール空港で朝食を食べた際も、シンガポール・ラクサと一緒にコピを飲んでいたが、あまり美味しくなかった。味にコクがないというか、薄っぺらいというか。やっぱりイポーのコピは格別である。そして、間もなくして出てきた朝食がこれである。

 白いスープとビーフンの上に乗っているのは素揚げ(?)した魚の頭。しかも、これ一つだけでなく、スープの中にもたっぷり入っている。スープは見た目どおり、あっさりとした薄味で、朝の胃に心地よい。

 魚を食べてみると、香ばしい味わいが口の中に広がり、歯で身の部分をこそぎ落としながら夢中で食べていく。これを食べるのはおそらく初めてだ。あっさり味のスープと魚の香ばしさがよく合う。ビーフンだからスルスルと喉を通り抜けていく。会話もそこそこにあっという間に食べ終えた。

 料理名を確かめるためにもう一度屋台に行ってみると、右のようなメニューとなっていた。食べたのは、おそらく下から2番目の「鱼头米」(「头」は頭の簡体字)。「米」と書いてあるからご飯物じゃないのかと思うかもしれないが、中国語でご飯物は一般的に「〜飯」と書く。なので、これはおそらく「米粉」の略だろう。

 ちなみに、「米粉」は広東語読みだと「マイ ファン」だが、閩南語(福建省南部の言葉)読みだと「ビー フン」となる。また、その下に似たような名前の「鱼头粗米」というのもあるが、「粗」は中国語で「太い」という意味もあり、こちらはもっと太いビーフンなのだろう。

 ネットで「魚頭米粉」で検索したところ、Wikipediaの中国語版に説明があった。首都クアラルンプールの南側に位置するヌグリ・スンビラン州に住むマレーシア華人が生み出した料理だという。これはマレーシア独特の料理だったのだ。しかも、一般的には「魚頭米」と呼ぶというから、屋台の表示もそうなっていたのだろう。

 さらに、マレーシアの食堂では比較的値段が高いほうで、他の麺類より5〜8リンギット(約150〜240円)高いとも書かれている。屋台の写真を見返してみたが、13リンギット(約390円)という金額は、確かに他の料理に比べて高い。

 値段がやや高めな魚頭米粉だが、イポーでまた食べたい朝食の一つとなった。

 朝食を食べ終えたあとは、車でイポーの観光地の一つへ。向かったのはTasik Cermin(タスィッ チェルミン)で、意味は鏡湖である。

 カルストの山を掘削した狭いトンネルを抜けると、崖と山に囲まれた小さな湖が広がる。広角レンズでないと全体を撮れないのが残念。鏡湖と呼ばれるほどには水面に景色が映り込んでいなかったが、これはおそらく風で少し波立っていたからだろう。

 これまで何度もイポーに来ているが、初めて訪れる場所だった。知り合いの話によると、湖は山に囲まれていて、山を超えていかないと近づけない場所だったが、最近になってトンネルが掘られ、アクセスが容易になって観光地になったのだという。

 初めて食べた朝食に、初めて訪れた観光地。まだまだ知らない食べ物や場所が、イポーにはたくさんありそうだ。
 

佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。コロナ禍の影響で3年間、海外に行くことができなかったが、ようやくマレーシアに行くことができ、次はどこに行こうかとあれこれ考える日々を送る。