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吃貨美味探訪記 No.195(出張地元メシ編その7)「脂の甘みと旨みに、思わず顔がニヤける──熊本県熊本市・霜降りの馬刺し」

 もう8年前のことになるが、2015年の秋に初めて熊本に出張。現地での用事を済ませたあと、熊本市の繁華街であるアーケード通りに繰り出し、熊本料理の店へと向かった。当然のごとく馬刺しが名物で、特に霜降りが自慢。その味は、それまで食べたことのあった馬刺しとは異次元の美味さだった。

熊本市の繁華街の中心地である通町筋あたりから臨む熊本城

絶妙な解凍具合で出される馬刺し

アーケード街は上通・下通・サンロード新市街の3つに分かれ、長さはそれぞれ586m、511m、235mある 地方都市ではJRの駅と繁華街がかなり離れていることがあるが、熊本市も駅前には特に何もなく、繁華街はそこから路面電車で20分ちょっと行ったところにある。そこは熊本城のふもとで、大きなアーケード街と小さな路地に、デパートや店舗ビル、飲食店がぎっしり並んでいる。

 午後半ばの時間に用事が済んだので、まずは熊本城に行ってみた。天守閣は西南戦争での出火で消失したため、そこに建っていたのは昭和35(1960)年に再建されたものだったが、それでも城内は見事な造りで、往時を偲ばせる雰囲気を再現していた。

2015年秋に訪れた際の熊本城。石垣の脇にある門から入ることができた。中は板敷きの廊下と畳の大広間が広がり、金箔張りの見事な襖絵も

 そして夜。事前にネットで探して見つけた、馬刺しが自慢の店に行った。そこで頼んだ霜降りの馬刺しがこちらである。

これで1人前。すり下ろした生姜とニンニクが添えられている

 これまで食べたことのある赤身とは全く違い、いい具合にサシが入っている。醤油に生姜とニンニクを同量ずつ入れ、つけて食べると、とろけるような脂の甘みが口いっぱいに広がってくる。食べたことのない美味さに、思わず顔がニヤける。その後に飲む球磨焼酎のキリッとした味わいがまたタマらない。

 店の女将さんから聞いた話によると、生食用の馬肉は食中毒防止のために2日間ほど冷凍されてから出荷されるそうで、食べる前の解凍方法の良し悪しが味の良し悪しにつながるとか。確かに、出されたばかりの馬刺しはやや固めだったが、時間がたつにつれて少し柔らかくなっていた。やや固めだったとはいってもまだ凍っているといったほどではなく、おそらく絶妙な解凍具合のところで出すのだろう。

 そして、馬刺し以外に頼んだ料理がこちらである。

(左)揚げたてのからし蓮根 (右)熊本の郷土料理の一つ、一文字ぐるぐる

馬モツ煮込み。普通のモツ煮込みとは違った味わいで絶品 からし蓮根というと作り置きの冷めた食べ物というイメージがあったが、本場で食べるのは揚げたての熱々。卵黄を入れた衣につけて揚げるから外が黄色く、中の穴に詰まった辛子味噌と同じような色になっている。辛味が思っていたよりも強くなく、これまた球磨焼酎とよく合う。

熊本地震で大きな被害を受けた熊本城の天守閣が復旧

 この出張の半年後の2016年4月、熊本県と大分県で震度7の大地震が発生し、熊本市内も大きな被害を受けた。筆者が2度目に熊本市を訪れたのは、それから5か月後の9月。熊本城も屋根の瓦が落ち、石垣が崩れているところもあった。当然、中に入ることはできず、遠くから見ることができるだけだった。

 その後、復旧作業が進められ、2021年3月に天守閣は復旧。それから1年5か月後の今年8月に熊本に出張に行く機会があり、再び熊本城を訪れた。

 以前は石垣の下の道を歩いて天守まで行くことができたが、今は城郭の周囲に高架の通路を設け、そこを通って天守閣近くまで行く。天守閣に入ると中は博物館のようになっていて、熊本城の歴史などについて展示されていた。

 右上の写真が大天守の最上階。耐震構造のためなのか、ゴツい造りになっている。金箔の襖絵のある畳間はほんの一部しか見られず、中はほとんどが博物館になっていたので、味気ないなと感じた。しかし、あとから熊本城のHPを見てみたら、大広間は壁が剥がれ落ちるなどの被害で、現在はまだ入ることができないということだった。

 天守閣はとりあえず復旧したものの、石垣を含めた全体的な完全復旧までにはまだまだ時間がかかり、今のところでは2052年度になる見通しだという。あと30年ほど。その時にまた熊本に来ることはできるだろうか。

佐久間賢三
仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも遊びに行かない日々。来年の旧正月にマレーシアに行く飛行機の予約を早々に取り、今からワクワクしている。