SecurityInsight | セキュリティインサイト

吃貨美味探訪記 No.197(出張地元メシ編その8)「観光名所になり、客が多くなったからなのか……──福岡県福岡市・中洲の屋台」

 初めて福岡市に行った時のこと。福岡といえば屋台。屋台といえば中洲ということで、夜の帳が降りるのを待って、歩いて中洲の屋台街に繰り出した。そこで体験したのは、期待していたのとはかなりかけ離れたものだった──。

ラーメンのオーダーが必須

 東京近辺で暮らしていると、屋台で飲んだり食べたりする機会などほとんどない。そんなわけで、福岡への出張が決まり、期待に胸を膨らませたのが、福岡名物の屋台に行くことだった。ネットで調べると、福岡の屋台は中洲、天神、長浜のエリアにあるとのことで、一番有名な中洲の屋台に行くことにした。

 行ったのは冬の2月で、日が暮れるのも早い。屋台が始まるのは早くて午後6時以降だということで、日がとっぷり暮れるのを待って、ホテルを出て中洲へと向かった。

6時ちょっと過ぎに行ったので、多くの屋台がまだ準備中

 初めての福岡、初めての中洲。川沿いにある屋台街に着いてみると、えっ?という感じ。想像していたのは、地元のお祭りのように通りに屋台がずらっと並んでいる風景だったが、それよりも屋台の数がずっと少なく、屋台が並ぶ通りも短かった。まあこれはこちらの勝手な思い込みだったので、致し方ない。どの屋台に入ろうかと狭い小路をプラプラと歩き、全く客がいない屋台に入るのもちょっと不安があったので、中に客の姿が見えた屋台に入ってみた。

冬はどの屋台も周りにシートを張って保温しているので、中はそこそこ暖かい

 メニューを見ると、おでんと焼き物、それに豚骨ラーメンといった、シンプルなメニュー。とりあえずおでん2つと串焼き盛り合わせ、それにビールを頼むと、オーダーを取っていた店の人が「一緒にラーメンも頼まないとダメだから」と、威圧的な口調で言ってきた。

 もともと後から豚骨ラーメンも頼むつもりだったし、それが屋台のルールなのかと思い、「じゃあ、豚骨ラーメンもお願いします」と言ったものの、店の人の物言いにかなりの不快感を覚えた。それから他にも客が入ってきたが、はやり客に対して高飛車な態度。これが有名な中洲の屋台なのかと、期待していただけにかなりガッカリした。

おでん(大根、牛すじ)と串焼き盛り合わせ。串焼きが食べかけで失礼

本場の豚骨ラーメンはけっこう豚骨臭いが、慣れると気にならない

 そんなわけで、料理の味は別に悪くなかったと思うが、それよりも不快な気分のほうが強く、まったく楽しめなかった。

 中洲のある博多区出身の知り合いにその話をしてみると、「屋台でラーメンを絶対に頼まないといけないなんて、聞いたことがない。昔はそんなことはなかった。観光客が増えたから、天狗になっているのと違うか」と、地元の人間として憤慨した口調で教えてくれた。

 その後も福岡市に出張で何度か行っているが、あれから中洲の屋台には行っていない。なので、たまたまその屋台だけがそういうやり方だったのか、他の屋台もそうなのかは分からない。好意的に考えれば、勝手を知らない観光客が増えて、いちいちオーダーを取るのが大変になったので、最初に必ずラーメンをオーダーさせるシステムにしたのかもしれない(それでも、あの威圧的な態度は客商売としていただけないが)。

 いずれにしても、その後の出張で天神(中洲から川を挟んだ西側)のほうにお気に入りの屋台ができたので、今後、わざわざ中洲の屋台街に行くことはなさそうである。天神での屋台体験については、またいずれ。
おまけカット1 翌日は博多バスターミナルからバスに乗って太宰府天満宮へ

おまけカット2 太宰府天満宮に向かう途中にあるスタバも観光スポット。設計は隈研吾氏

おまけカット3 博多駅で昼食用に買った駅弁。地元老舗料理屋がつくる穴子押寿司と鯖のバッテラ、ふぐの明太唐揚げ、さごしの柚庵焼、いかの旨煮などが入っている。これで1080円は安い(当時の価格。現在は1380円)

佐久間賢三
仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも遊びに行かない日々。来年の旧正月にマレーシアに行く飛行機の予約を早々に取り、今からワクワクしている。