吃貨美味探訪記 No.199(出張地元メシ編その9)「東京ではなかなか食べられない魚ばかり──徳島県鳴門市・徳島の海鮮3種」
- 2023/12/02 00:00
- 佐久間賢三
初めての徳島県出張は、渦潮で知られる鳴門市だった。鳴門市は鳴門海峡に面しているだけに海の幸が豊富だ(ほとんどの都道府県が海に面しているのだから、内陸部でもないかぎりどこも海の幸が豊富なことは、ここでは置いておく)。特に今回は、これまで食べたことない徳島特産の魚ばかりを食べてきた。
ブリを食べるつもりが、ワカメ尽くしに
午後4時ごろに現地の用事を済ませ、ホテルにチェックインして一息つくと、夕食を食べに今回の出張先の人がお薦めしてくれた店へと向かった。そこは地物の海鮮が安く食べられるということで人気の店だという。
頼んだのは、すだちぶり刺身定食。すだちぶりなど聞いたことがなかったが、ブリはブリでも、徳島特産のスダチの果皮を添加した飼料で育てたブリとのこと。それがこれである。
徳島県物産協会のHPの説明によると、すだちぶりは一般の養殖ブリに比べてビタミンEが多く含まれており、さっぱりとした風味、引き締った身、きめ細やかな肉質が特徴なのだとか。食べてみると、確かに厚めの切り身は弾力性があるが硬いわけではなく、生臭さもなくしっかりとした味わいだった(ような気がする)。
とはいえ、実のところ、すだちぶりの刺し身よりも、右のお椀の味噌汁のほうに目を奪われていた。お椀がデカい。ご飯のお椀よりもデカい。小ぶりのラーメン丼くらいある。しかも、中にはたっぷりのワカメ。ぬる燗の日本酒のツマミにワカメも頼んだら、定食の刺し身のツマにもワカメが付いていて、期せずしてワカメ尽くしの夕飯となった。
「ヨコ」の刺身とは?
夕食を食べ終えてホテルに戻ったはいいが、まだちょっと飲み足りない。再び外に出て、飲食店がありそうな通りを歩いていると、小洒落た居酒屋があったので入ってみた。居酒屋というよりバーのようなカウンターがあり、値段が手頃な刺し身の盛り合わせがあったので、頼んでみた。それがこれ。
手前がさっきも食べたブリ、その隣がおそらく鯛、そしてタコ、その後ろにマグロの赤身のようなもの、ブリとマグロの間に隠れているのはサーモンである。店のマスターの話によると、このマグロの赤身のようなものはクロマグロの若魚で、徳島では「ヨコ」と呼ばれて、よく食べられているのだという。
稚魚から成魚になるまでの間に呼び名が変わる「出世魚」ではブリがよく知られているが、マグロも大きさによって呼び名が変わるとは知らなかった。で、肝心のお味のほうは……もう覚えていない。
もう一つ、マスターの話で興味深かったのは、徳島名産のスダチを刺し身に絞ること。刺し身の上に直接絞るか、醤油に絞り入れるか。さらに通となると、スダチを絞る際に皮の側を下にして、わざと皮の苦味を絞り汁に加えるのだという。さっそくやってみたが、慣れないからか、絞り汁が下に行かずに上に飛んできて、手のひらを酸っぱくしただけだった。
スダチの使い方でもう一つ。徳島ではスダチを味噌汁に入れるのは普通のことなのだとか。スライスにして入れたり、絞り汁を入れたり。どんな味になるのか想像つかない。次に徳島に行った際に、すだち入り味噌汁を食べる機会があったら、その時にはまたご報告する。
「ぼうぜ」って何?
翌日、バスで徳島市へ。徳島駅に着くと、駅ビルの地下にあったスーパー(現在は飲食店街になっている)のお弁当売り場で、見たこともない食べ物を見かけた。それがこれである。
大きさは、握り寿司を1.5回り大きくしたくらい。握ったご飯を包むように光り物のネタが乗っかっている。商品名は「(徳島名物)ぼうぜ姿寿司」。姿寿司だから、魚一匹を丸々使った寿司である。上の写真の左側が口で、その右下部分にあるのが目のようだ。
Wikipediaで調べてみると、「ぼうぜの姿寿司」とは「イボダイを頭のついた丸のままで背開きにし、酢で締めて、寿司飯を詰めて押し寿司にした料理」だそうで、徳島県では一般的な食べ物なのだという。お味のほうは、特に特徴があるわけではなく、光り物の大きな握り寿司。普通の握り寿司より大きいので、小腹が空いた時によさそうである。
今回は、徳島特産の魚3種を食べることができ、しかもスダチの意外な使い方も知ることができた。その後も何度か徳島に行く機会があり、徳島名物を食べてきたが、その話はまた後日に。
佐久間賢三
仕事が忙しいわけでもないのに、出張以外にどこにも遊びに行かない日々。来年の旧正月にマレーシアに行く飛行機の予約を早々に取り、今からワクワクしている。