YONAYONA夫婦★酒場日記 – 第2夜「呑者家 本店」

10月の3連休初日、新宿に出かける。西新宿のブックファーストで、妻、仕事用の本を買う。企業向けのセキュリティ解説のムック、2700円である。夫、『オレはこの倍の厚みをほぼ半額で作ってんぞ』と憤る。京王の鳩居堂にてハガキと、お年玉用のポチ袋を購入。ちょっと早いけど、必要なときに限ってセンスのあるヤツが見つからないので、買っておく。なんやかやで2時間ほど用事をこなすうち、夫、空腹で不機嫌になる。もう8時か。わかったヨ、お待たせしました「呑者家(どんじゃか)本店」へ──。

「呑者家 本店」

新宿三丁目の「呑者家 本店」は新宿御苑通り沿い、日曜も朝も(なんと7時まで)ノンベを迎えてくれる希少な店で、夫と妻の行きつけである。本店以外にも新宿に4店舗を展開していて、「銅鑼どら」もよく行く店。本店で飲んでからフウラフラはしご……どうしたことか末広通り店で鍋焼きうどんを食っている午前4時……なんてこともある。ま、要するに大好きなのである。

あまり広くない店内はいつも満員、活気に満ちている。通りを隔てて2丁目があるのでオカマさん集団の嬌声が響く。内田裕也みたいなボスを上座に置いて、小劇団の人々が議論を戦わせている。出版や映像系の人たちも多いかな。学生がいないのにこの盛り上がり、元気なノンベが集っている証拠である。そう、「ウーロン茶下さい」なんて人、あんまりいないかもしれない。

「地獄豆腐」(500円)

お気に入りのカウンターにこの日も座る。配膳口の真横だけど、注文がすぐに通るし、美味しいものを目撃して「アレ、何?」って聞くことができる。テーブル席の騒音が気になるおふたり様には、カウンターがオススメ。

まず、生中(500円)とマカロニサラダのお通し、わさび野沢菜(450円)で乾杯。混んでいたのですぐに出てくるものとはじめて注文した野沢菜を見て、夫、驚愕! 「こ、これは、魔法の美味しい粉!?」。野沢菜にキラキラと光る結晶、味の素だと思ったのである。でも違う。凍った漬け汁もろともシャリシャリした半解凍状態のを出してるんだ。寒い地域の樽漬けの漬物ってこういうことがあるので、もしそれを狙ったんだとしたら、スゴイ。

この店が楽しいのは、メニューがとにかく多いこと! 壁のいたるところにカラフルなお品書きが貼ってあり、初めての人はとまどうんじゃないかしら。でも大丈夫、なにを頼んでも良心的なボリューム、きちんとした味。大人の通う店ですから。夫と妻はいつも頼む「地獄豆腐」(500円)、「鶏くびつる肉わさび焼き」(350円)、「なめろう」(550円)にプラスして、「あつあつカツ煮」(600円)を注文。

「鶏くびつる肉わさび焼き」(350円)「地獄豆腐」は豆板醤を利かせた豆腐の炒り煮風のものだけど、キムチと生唐辛子(赤と青の2種類)が入って、辛さの幅が広がっている感じ。美味くて辛いのに生卵を絡めると、夫のような"辛いのあんまり"派でもいただける不思議……妻は“辛いの100%好き”で妥協のない料理を作りがちなので、反省である。

ビールのハーフ&ハーフ2杯を追加後、「鶏くびつる肉わさび焼き」が到着。お得でちょっと珍しい一品である。いわゆる「せせり」と言われる部位だが、こまこまちぎれていない。首の周りのお肉をきちんとつないで剥ぎとっているのだろう。

コレ、妻もやったことがあるが、結構面倒な作業である。良い肉屋で鶏ガラを買うと首がついたままだったりする。弾力があってあっさりとした脂がのって美味しいところなのに、タダ同然! 捨てるのはもったいないとこそぐのだが、慣れていないととても労力に見合わないのである。

「利き酒セット」(800円)

「なめろう」とダシの利いた「あつあつかつ煮」で、日本酒が飲みたくなる。なんといってもここでお得なのは、「利き酒セット」(800円)。元々日本酒には力を入れていてリーズナブルに飲めるのだが、月替わりの厳選3銘柄をだいたい6勺ずつ味わえて、800円! どう考えたって500円は得している感じがするのである。

実はこのセットを注文したのは、2回め。長年かよっていながら“そんなトーシロみたいなモンは頼まん!”と見向きもしなかったから、随分損したワケである。試験管立てみたいなのに入ってくるのが切ないけど、“よーく確認して、味わって飲めよ”というお店の意向に従って、味わってみて下さい。

この後、馬刺し(700円くらい。失念!)とハーフ&ハーフを2杯追加して、ちょうどよく終了。よく飲んでよく食べて、お会計は9000円ちょうど。この店で飲むと、ホント、良い酔い方をするんだよなあ。酒も肴も美味しくて、酒場の雰囲気にどっぷり浸かる感じ……これこそ、週末なのである。ノンベなら敬意を表したくなるお店、ココにあります。

YONAYONA夫婦
"愛は酒がつなぐもの、酒は愛をつなぐもの”。そんな心意気のもと、夜な夜な酒場に出かけている。「夫」は腹囲1メートルが自慢(!?)のIT系編集者。好物は日本酒、ビール、コーヒー、玉子、歯ごたえのイイ食いもの。「妻」はWeb系の飲食ライター。バブル時代に親に美味しいものを食べさせてもらっていたクチだが、もうそんなトコは卒業。好物は日本酒、ビール、刺身、豆腐、おひたし。ふたりともほぼ"好き嫌いなし”という、今の世の中に珍しい逸材。