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中国美味紀行(四川編)―その2「スパイシーポークの肋骨ブリッジ乗せ」

前回に続いて、四川省の東南端にある宜賓(イービン)という町の料理をご紹介しよう。

宜賓の旧市街にある路上市場。こういうところを歩くのが楽しい現地に住む中国人の友人に連れていかれたのは、旧市街の中心部にある「李庄白肉」というレストラン、というか、大きめの食堂といったほうがいいかもしれない店。昼から人がいっぱいだったから、地元ではけっこう有名な店のようだ。

肋骨ブリッジ乗せの正体は?

そこで出てきたのがこの料理。

ブリッジの下にあるポテトの付け合せも、汁の味が染み込んでいて美味い!料理名を聞き忘れたのだが、なかなかフォトジェニックな料理。豚の肋骨をブリッジに見立て、その上にぶつ切りされた肉がどっさりと乗っかっている。写真もそこそこに、さっそくいただいた。

お味のほうは、さすがに四川料理だけあって、かなりスパイシー。かといって唐辛子がききすぎているわけでもなく、辛いものが苦手な人でも食べられそう。とはいっても、筆者は辛いものにかなり免疫があるので、もしかしたら苦手な人にはかなり辛いかもしれない。

そしてもう一つの料理がこちら。

汁の中にたくさんの唐辛子が浮かんでいる。これでも四川料理にしては少ないほう。ちょっと見にくいが、写真左下、唐辛子の脇に浮かんでいる小さい粒が花椒だ四川料理の定番、水煮魚(シュェィヂューユー)。麻辣な味付けの汁の中に川魚のスライスをぶち込んで煮た料理だ。川魚の臭みを麻辣の味付けが羽交い締めにして押さえつけてしまうので、美味しく食べられる。むろん、辛いもの好きならの話ではあるが。

“麻辣”が四川料理の味の決め手

あっとここで、四川料理の味を象徴する“麻辣(マーラー)”について説明しておこう。面倒なので簡単に言ってしまうと、“麻”が花椒(ファジァォ)の舌がしびれるような辛さを表し、“辣”が唐辛子の辛さを表す。この花椒、日本では山椒に似たものとされているが、味はかなり違う。花椒が大量に料理に入っていると、本当に舌が痺れてくる。これが入っていないと四川料理とはいえないといっても過言ではないほど、四川料理の味に重要なものだ。

ちなみに、マーラーのマーを下げ調子でラーは低いままで言ってしまうと作曲家のグスタフ・マーラーになってしまう。四川料理のマーラーは、マーが上げ調子でラーは下げ調子になるのでご注意を。

そして、この店を代表する料理がこちら。

豚肉の艶々とした脂身が、脂身好きには堪えられない。上の写真とテーブルが違うんじゃないか?という鋭いツッコミはナシということでその名も「李庄白肉」(リーヂュアンバイロウ)。なんのことはない、料理の名前をレストランの名前にしてしまっただけのことだ。

この李庄白肉は地元・宜賓の料理。李庄というのは宜賓の北にある古い街で、1500年近い歴史があるらしい。そこの名物料理が李庄白肉というわけだ。白肉というのは脂身の入った肉のこと。李庄白肉に使われているのは、豚の後ろ足、お尻に近いあたりの肉らしい。

箸で肉の端っこをつまんだら、そのまま箸をグルグルと回して箸に巻きつける。これが本式の食べ方らしい茹で上げた肉を薄くスライスしただけ。それを辛いタレにつけていただく。ジューシーな豚肉と脂身の甘さがタレのしょっぱさ(麻辣味ではない)と絡み合い、口の中でダンスを踊りだす。

もう昼からお腹いっぱい。夜は夜で、また地元料理の歓待が待ち受けている。これだから友人がいる地方に行くのは楽しい。

 

 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。