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中国美味紀行その25(アモイ編6)「油で揚げてないからお腹にもやさしいオヤツ──春巻」

 日本で春巻きというと、やや平べったい円筒形の皮の中にタケノコやニラ、シイタケ、豚肉などの具材を入れて油で揚げたもの。日本の中華料理を代表する料理の一つともいえるが、実は中国では、あまり食べることがない。そしてアモイには、これまで見たこともない春巻きがあった。

その場で一つひとつ巻いていく

 数多くの観光客が行き交うアモイの繁華街、中山路から細い路地を入っていったところに、ほとんど屋台のような店がある。看板を見ると「春巻」と書かれていて、路地の脇に置かれた小さなテーブルの上で、おばちゃんが何やら手で巻き巻きしている。

お店は幅3メートルほどの路地の一角にある 見ていると、電気ホットプレートの上に置かれた金だらいに乗せられてホカホカと湯気がたっている具材をレンゲですくい、あの赤いソースや香菜(パクチー)、青のりのようなものが散らばった皮の上に乗せていき、器用に丸く巻いていく。

 けっこう繁盛しているようで、客が行列を作るというほどではないが、次々に客が来ては、作ってもらっている。どうやら作りおきするのではなく、注文が入るたびに一つずつ作っているようだ。

 春巻きのようで春巻きではない。どちらかというとベトナムの生春巻きのほうに近いだろうか。なにせ油で揚げていないのだから。で、出来上がったのがこちらだ。

「春巻」(1個3元=55円ていど)。皮は薄いので噛み切りやすい 大きさはスニッカーズていど。具材が温めてあるので、作りたてはホカホカしていてうまい。お味のほうもあっさりしていて、具材の味はまさに揚げてない春巻きのようなもの。上の写真の左下側に白っぽい粉が入ったお椀があるが、あれに入っていたのはピーナツを砕いだ粉のようで、ときおりピーナツの味とツブツブ感が口の中に入ってくる。アモイの料理でピーナツというのは、赤いソースと同様になくてはならないものの一つのようだ。

 このような軽食のことを中国語では「小吃(シァオチー)」といい、中国各地にありとあらゆるご当地小吃がある。アモイには小吃が数多くあり、前回ご紹介した「海筍凍」もその一つ。次回からはアモイの小吃をいくつかご紹介していくことにする。

オマケカット。アモイ島の東側はビーチが続く。海の向こうに見えるのは、もともとは福建省の島ながらも台湾が実効支配している小金門島オマケカットその2。その台湾領の島に向けて、海岸沿いに建てられた巨大看板。「一国両制統一中国」とは「一つの国(中国)の中で、二つの制度(社会主義と資本主義)を併存して実施させることで中国を統一する」という意味※修正:1月9日にアップした四川編の最終回「春節を迎えるための保存食──四川臘肉と香腸」において、友人から送ってもらった漬物をザーサイとご紹介したが、先日、友人に再度確認する機会があり、これはザーサイとは別物であるということが判明した。本当は大頭菜という野菜の漬物で、ザーサイに使う野菜と似ているが、漬け方が違うようである。本文のほうには訂正を挿入済みである。
 

 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。