SecurityInsight | セキュリティインサイト

中国美味紀行その40(上海編11)「あのシューマイの中に入っているのは──糯米焼売」

 シューマイといえば、日本では白い皮の中にひき肉が包まれ、真ん中にグリーンピースが入った小さな円筒形のものが普通。だが中国では、シューマイにはさまざまな形や素材のものがある。上海でシューマイといえば、中にモチ米が入ったものが一般的である。しかも、形は日本のシューマイと似ても似つかない形をしている──。

中国にはさまざまな形と素材のシューマイが

 朝、肉マンやマントウ(饅頭=中国の蒸しパン。味がなく具も入っていない)などの朝食を売っている店に行くと、湯気がたつ蒸籠の中で、まん丸い肉まんの脇に、少し変わった形のものが並んでいる。それがこれ、上海で「焼売」と呼ばれているものである。

「糯米焼売」(4つで4元=約64円)。当時住んでいたアパートの敷地を出てすぐのところにある店で購入。小さな店で、いつも朝早くから夜遅くまで営業していた ご覧のとおり、中に米らしきものが入っている。しかも茶色い。これはモチ米をひき肉や醤油と一緒に炒めて味付けしたもので、見た目ほど味は濃くなく、これだけで立派な朝ごはんになる。しかも、1個の大きさが日本のシューマイより一回り以上大きく、4つも食べればお腹いっぱいになる。

 この形、人によって見え方は異なるかもしれないが、フジツボまたイソギンチャクに見えなくないだろうか? 中国ではこれもシューマイの形の一つなのである。以前、四川編その6の「このイソギンチャクみたいな食べ物は?──ガラス焼売」でご紹介したものも、同じような形をしている。それがこれ。

「玻璃焼売」(6.5元=約104円)。朝、成都の有名店までバスに乗って食べにいった こちらの中身はひき肉で、上海のものとは違い、皮に大きめのヒダが入っている。こちらも四川では朝ごはんとして食べられることが多い。

 そしてもう一つ、広東料理の飲茶(ヤムチャ)で出てくるシューマイがこれ。

「鮮蝦焼売」、飲茶の点心の定番。値段は……飲茶はいつも友人にごちそうになっていたから分からない これは海老シューマイで、皮の色が黄色いものの、日本のシューマイに形が似ている。四川編でも書いたが、「焼売」は広東語で「シゥマーイ」と読み、普通話(標準中国語)の読み方である「シャオマイ」より日本語の読み方に近い。なので日本のシューマイは広東料理から入ってきたものなのかもしれない。

 さて、以前「微信」(中国版LINE)で中国人の友人たち向けに四川のシューマイの写真をアップして「今日は焼売を食べた」と中国語で書いたところ、一人の友人から「焼売ではなく焼麦だよ」と言われた。「焼売」と「焼麦」、どちらも普通話の読み方は「シャオマイ」。ネットで調べてみたところ、一般的に中国北方では「焼麦」と書き、南方では「焼売」と書くようである。

 中国の検索サイト「百度」で「焼売」をキーワードに画像検索してみると、他にもさまざまな形のシューマイの写真が出てきて、どれも美味そう。中国は小麦粉の皮で何かを包んで蒸した食べ物が豊富にある。肉マンしかり、シューマイしかり、餃子しかり、どれもご飯のおかずではなく、それだけで独立した食事として食べられることが多い。

 朝のシューマイ、けっこうお薦めである。
おまけカット。上海の有名観光スポット「豫園」の近くにある屋台街。観光客もいるが、地元庶民のほうが多い

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。