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中国美味紀行その67(日本編1)「池袋駅北口で味わう中国本場の味──生煎」

 ついにネタ切れとなった中国美味紀行は、新年1回目から「日本編」に突入する。

 中国から帰国して以来、中華料理レストランなどで何度か食べる機会があったが、いつも感じるのは「これは中国の料理じゃない」という違和感。日本の洋食が西洋の料理を元に日本で独自に発展したもので、本当の西洋料理とは異なるものであるのと同様、日本で発展した中華料理も、中国の中国料理とは似て非なるものとなっているのがほとんどだ。

 もちろんラーメンや焼き餃子、チャーハンなど、日本の中華料理もそれはそれで美味いのだが、そういった“中華料理”ではなく、日本でも本場の“中国料理”を味わうことはできるのか。そこで今回から、筆者が東京を中心に日本国内で見つけた、まだ日本ではそれほどお馴染みではない中国料理をご紹介していく。本場とまったく同じ味というわけではないが、最近ではかなり近い味のものが日本でも食べられるようになっている。

ガッカリさせられた横浜中華街での味

 日本編の1回目にご紹介するのが「生煎」(シェンジエン)である。日本では「焼き小籠包」などとも呼ばれている、上海名物の小吃である。上海の生煎については、中国美味紀行その31(上海編2)「3点セットで朝から大満足──上海の朝食」でご紹介しているので、興味のある方はそちらをご覧になっていただきたい。

 この生煎、最近は横浜中華街でも売られるようになって人気があるようで、店の前には行列ができていたりする。以前、この列に並んで食べたことがあるのだが、本場の味とはまったく違った。

横浜中華街で、生煎を求めて行列を作る人たち。看板にある「正宗」とは中国語で「本場の、正統の」という意味。その後に「生煎包」と書いてあるが、本来は「生煎饅頭」が正しい

 まず皮に旨味がない。中に入っている肉餡とスープも、小籠包のように中に熱々のスープが入っていることを強調したいがためなのか、やけにスープが多い。上海の生煎にはこんなに多くスープが入っていない。それでもスープが美味しければまあ許せるのだが、それほどの旨味も感じられない。

 最近の横浜中華街は、料理の味についてあまりいい話を聞かないが、やっぱりこの程度である。

 そこで、どこかに美味い生煎が食べられる店はないかとネットで探してみたところ、なんと近場の池袋駅に生煎の店があった。場所は池袋駅北口を出てすぐのところ。狭い店内にはカウンターしかなく、ゆっくり食事を楽しむというより、小腹が空いた時にサクッと食べに行くような感じだ。

 本場上海と同様、4個1セットで売られており、頼んで出てきたのがこちら。その下の写真は、上海で一般的に売られている生煎である。

4個で400円(食べた当時)

上海で朝食にときどき食べていた生煎。4つで3元(約52円)

 上海のものに比べて小振りで、かなり皮が薄い。ああ、これはまたハズレかなと思って食べてみると、中にはほどほどにスープが入っていて、皮の味にもしっかりとしたコクがある。ちょっとイメージとは違ったが、これはこれでイケる。

皮を開いてみるとこんな感じ

 この店がある池袋駅北口のエリアは、別名「池袋チャイナタウン」とも呼ばれている。筆者的には「チャイナタウン」と呼ぶほどのものじゃないだろうとは思っているのだが、実際のところ、数多くの中国料理の店が並んでおり、それらの店で働いているのも中国人だし、客の多くも中国人である。

 生煎を売るこの店では、時間帯によってはかなり長い行列ができており、しかも並んでいる人の中には中国人と思われる人たちも多くいる。つまり、中国人たちが列を作ってでも食べたいということは、それだけ本場の味に近いということでもある。

 この池袋駅北口のエリアには、この他にも本場の味に近い中国の食べ物を出している店がある。それらの店では、日本化した中華料理レストランでは出していないような料理が食べられる。これからしばらくは、ここで食べ歩いた料理をご紹介していく。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。