中国美味紀行その71(日本編5)「皮はサクサク、肉はジューシーなミートパイ──鮮肉月餅」
- 2018/03/03 00:00
- 佐久間賢三
中国は今年の春節が終わったばかり。旧暦の1月15日(今年は3月2日)は「元宵節」と呼ばれ、この日をもってとりあえず春節期間は終わりとなる。横浜中華街では、春節期間に数々のイベントがあり、元宵節には「燈籠祭」が毎年行なわれている。この燈籠祭、英語では「ランタン・フェスティバル」と呼ばれていて、中国では灯籠を飾ったり、紙でできた灯籠を空に飛ばしたりするお祭りが開かれている。
ちなみにこのコラムで取り上げている池袋駅北口エリアは、まだチャイナタウンとしての体をなしていないため、春節だからといって特にイベントが行なわれたりはしていない。
と、珍しく時節ネタから始めたところで、本題に入ろう。今回は池袋駅北口エリアで食べた「鮮肉月餅」(シエン ロウ ユエ ビン)である。
品質向上を期待した2度目の味わいはいかに
月餅というと、普通は中秋節の時に食べる、中にアンコが入った円形で平べったいお菓子のことを指すが、鮮肉月餅はそれとはまったく異なる。月餅というよりも皮の部分がサクサクのミートパイみたいな感じで、ジューシーな肉餡とサクサクな皮がたまらなく美味い。
中国全土で食べられているわけではないようで、もともとは上海の近くにある蘇州が発祥。今では上海を中心に近隣の江蘇省や浙江省で主に食べられている。上海の鮮肉月餅については、以前の「中国美味紀行その32(上海編3)「中華風ミートパイに地元民も行列──鮮肉月餅」で書いているので、興味のある方はそちらをぜひご覧になっていただきたい。
ということで、池袋駅北口エリアで食べた鮮肉月餅である。もう1年以上前のことになるが、このコラムの日本編第1回で取り上げた「生煎」の店の前を通りかかった時に、鮮肉月餅を販売しているのが目に入った。1箱4個入りで1000円。ちょっと高かったが、鮮肉月餅が大好物の筆者としては食べずにはいられなかった。
この店の生煎が本場の味に近いだけに、かなり期待して食べたのだが、かなりガッカリする結果に。皮はまあサクサクで良かったのだが、肉餡がどこかの工場で作ったような手抜きの味で、しかもまったく美味くなかったのだ。
あれから1年ちょっと。故郷の味を求めてやって来る中国人の客が多い店だけに、少しは品質が向上しているのではないかと思い、再びその店の鮮肉月餅を食べてみた。
肉餡は前回よりやや味が向上していたが、今度は皮がまったくダメ。以前食べたものはしっかりサクサクしていたのに、今回のはそれがまったくなくなりシットリして、電子レンジで温めたような感じになってしまっていたのである(実際、店頭の電子レンジで温めてから出していた)。
日本でこの店以外に鮮肉月餅を販売している店を筆者は知らないので、鮮肉月餅好きとしては、ぜひ品質向上に励んで、本場に近い味を出してもらいたいものである。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。