中国美味紀行その79(日本編13)「食べているうちに脳内が麺&スープとの対話モードに──蘭州拉麺その2」
- 2018/07/07 00:00
- 佐久間賢三
このコラムはレストラン紹介ではなく料理の紹介なので、本来なら一度紹介した料理はもう取り上げないつもりだったのだが、せっかく食べたんだし、前に食べたものよりも美味しかったので、自ら決めた禁を破ってもう一度取り上げることにした。前回のコラムで取り上げた鴨脖子の店は中国の有名チェーンのニセモノだったが、今回は本物の有名チェーンの店である。
蘭州出身の人が「あそこは本場の味」と
ある時、池袋駅北口のとある店で蘭州出身の人と出会ったので、「東京で一番美味しい蘭州拉麺の店はどこか?」と聞くと、それは昨年オープンしたばかりの店で、「一度食べにいったけど、すごい行列で、ほとんど本場と同じ味だった」という。
蘭州拉麺がどんな食べ物かについては、中国美味紀行その69(日本編3)「店の中でバタンバタンと麺を伸ばしていく──蘭州拉麺」をご覧になっていただきたい。
そこの店のことは、オープンした際にネットのニュースで取り上げられていたので知っていた。蘭州にある有名な蘭州拉麺のチェーン店が日本に初進出した店である。それまでは近くに行く機会があったら行ってみようと思っていた程度だったのだが、蘭州出身の人が「本場の味」と言うのを聞いて、近くに行く機会がなくても店に行ってみることにした。
店内にはスープの味付けに使っているのであろう漢方っぽい香りが漂っている。メニューはたった一つ、蘭州牛肉麺のみ。店では「蘭州牛肉面」と、なぜか中国語の簡体字が混じって表記されていて(「面」は麺の簡体字)、中国語を知らない人は少し面食らうかもしれない(書いてしばらくしてからシャレになっていることに気づいたw)。それはともかく、3種類ある麺の太さを選んで出てきたのがこちらである。
その香りどおり、スープからは漢方系の味が漂ってくる。筆者は蘭州に行ったことがないので、本場の蘭州拉麺の味を知らないのだが、おそらく本場ではいろいろな味の蘭州拉麺があるのだと思う。そしてこの店の味は漢方系だということなのだろう。
店で打っている麺には程よいコシがあり、麺を噛むごとに口の中で心地よいリズムが刻まれていく。牛肉にもしっかり味があり、これまで中国で食べてきた蘭州拉麺とは比べ物にならないほど美味い。食べているうちにいつしか無我の境地になり、脳の中で麺&スープと対話するかのごとくただひたすら食べている自分に気づいた。こんなことは、四川省の成都で唇を痺れさせながら麻辣味のワンタンスープを食べたとき以来である。
漢方系の味は好みが分かれるところだと思うが、これはクセになる味である。今回はトッピングの増量をしなかったが、次はパクチーと牛肉を大盛りにして食べてみたい。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。