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中国美味紀行その85(日本編19)「香港茶餐廳メシ編その5 肉の3種盛りで豪華だけど、香港では一般的な庶民メシ──焼臘飯」

 香港や中国の広東省に行くと、町中で店のガラス越しにローストされた肉類がぶら下がっている光景をよく目にする。それが、香港を含む広東名物の焼臘(広東語読み:シウラップ)である。これが今では東京の茶餐廳で普通に食べることができる。とはいえ、本場の味を再現するのはなかなか難しいようだ。

香港や広東省の町中でよく見かける風景(写真は深圳)

久しぶりに食べる焼臘、かなり期待していたのだが

「焼臘」とは、味付けしてローストした肉類のこと。豚肉に鶏肉、鴨肉、はてはガチョウの肉を使ったものなど、さまざまな種類がある。中国の「焼臘」については、中国美味紀行その47(深圳編1)「広東に来てこれを食わずば……──焼臘」でご紹介しているので、興味のある方はそちらを参照していただきたい。

 香港で焼臘は、茶餐廳だけではなく、普通のレストランや焼臘専門の弁当屋など、さまざまなところで食べることができる庶民的な食べ物なのだが、高級レストランに行けば、それなりに高級な味わいのものが出てくる。

 東京では香港スタイルの茶餐廳で食べることができるが、今では焼臘専門の食堂までできている。そこで食べたのがこちら。

焼臘3種を乗っけたご飯。下から脆皮焼肉、蜜汁叉焼、牛肉のスネ肉を煮込んだもの

 焼臘3種を乗っけたご飯を“三宝飯”などと呼んだりもするのだが、本場ではこれにアヒルの塩漬け卵(見た目はゆで卵とあまり変わらない)が付くこともある。

 脆皮焼肉は、皮の部分がカリカリで、その歯ざわりを楽しみながら、皮の下の脂身とともに豚肉の甘味を存分に味わうことができるのだが、この店のものはややしょっぱく、肉の甘味があまり感じられなかった。

 蜜汁叉焼は蜂蜜を使ったタレの甘みが肉に染み込み、ほんのりした焦げの苦味とともに濃厚な味を作り出しているのだが、この店のものはそこまでの深い味わいはない。スネ肉を煮込んだものは、焼臘といえるのかどうか不明で、これまで食べたことがなく、なんとも評価がしづらい味だった。筆者的には、このスネ肉ではなく焼鴨(ローストダック)が入ったものがベストな三宝飯の組み合わせなのだが、残念ながらこの店ではそれがなかった。

 久しぶりに焼臘飯が食べられるということで楽しみにしていたのだが、結局、ちょっと期待ハズレな結果に終わってしまった。

 たまたまこの店は口に合わなかったのかもしれないと気を取り直し、別の店にも行ってみた。ここで食べたのは、前回食べられなかった焼鴨を乗せたもの。本場では、一般的に焼鴨にはタマリンドを使った甘酸っぱいソースが付いてくるのだが、日本ではコストが合わないのか付いてくることはなく、やや塩味のついた焼鴨をそのまま食べるしかなかった。

焼鴨飯

 残念ながら東京で食べる焼臘飯はあまり期待できないという結果になってしまったが、茶餐廳も焼臘専門店もまだ東京に進出してきたばかり。これからの味向上に期待したい。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。