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中国美味紀行その99(日本編21)「東京にも専門店が進出してきてほしい──桂林米粉」

 たった3泊4日の旅行で12回分ものネタを稼いだ台湾編が終わり、半年ぶりの日本編。今回は東京を離れ、九州は福岡で食べた中国の味をご紹介する。中国に住んだことがある人なら誰でも一度は食べている、いや、実際には多くの人がしょっちゅう食べている桂林米粉(グィリン ミーフェン)である。

本場の名店から伝授された味付けのタレ

 筆者が深圳に在住している時、桂林に行って桂林米粉を食べたことがある。それまで深圳で桂林米粉を何度も食べていたが、本場のものはまったくそれとは違っていた。その時の話は〈中国美味紀行その66(桂林編)「中国全土で食べられるけど、本場で食べる味はまったくの別物──桂林米粉〉に書いているので、そちらをご覧になっていただきたい。

桂林で食べた桂林米粉。これで一杯100円弱

 ここで簡単に説明しておくと、桂林米粉というのは、中国南西部にある広西チワン族自治区の町、桂林の名物料理。米で作ったうどんのような麺を、スープではなくタレでいただく料理である。日本で米粉(ビーフン)というと、春雨のように白くて細い麺で、炒めて食べることが多い。しかし桂林米粉の米粉は、うどんのように太い麺である。

 日本に帰ってきてからもあの味を、とネットで検索したのだが、中国料理ならたいていのものがある池袋北口界隈では食べられる店が見つからない。唯一出てきたのが、福岡市にある店だった。

 わざわざ食べに行くには遠すぎるが、うまい具合に博多に出張に行く機会があり、豚骨ラーメンにも博多うどんにも目をくれず、わざわざ地下鉄に乗って、桂林米粉が食べられる店へと向かった。そこで出てきたのがこちらである。

桂林米粉を頼むとセットで出てくる。漬物がもう少しほしいところ

 漬物の種類も量も本場よりずっと少ないが、見た目的にはかなり本場と似ている。丼の底に溜まっているタレとうどんをよく混ぜてからいただくと、日本で生産しているツルツルの米粉に、本場の名店から伝授された味付けのタレが絡み合い、予想していたよりも本場の味に近かった。焼豚の皮の部分のカリカリさがちょっと足りなかったが。

 最後に、本場の作法どおりに、白濁したスープを丼に入れて、少しだけ残しておいた麺と一緒に平らげた。

 本場四川の味に近い汁なし担担麺が人気になり(というか、本場の担担麺はもともと汁なし)、蘭州ラーメンの有名店が東京に店を出す時代。桂林米粉の店もぜひ東京に進出してきてもらいたいものである。
 

佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。