中国美味紀行その123(四川食い倒れ旅編12)「麻辣味に浸された具が大きな丼に──鉢鉢鶏」
- 2020/05/02 00:00
- 佐久間賢三
昼食に黃鱔(フアン シャン=たうなぎ)を食べ終え、腹ごなしがてら中心部の繁華街をしばらくプラプラと歩いていると、突き当りで大きな川に出た。川からの風に吹かれながら川沿いを歩いていると、川の遠くに何か大きなものがあるように見えた。それが、楽山の一大観光地、楽山大仏であった。そこで、次の晩飯を食べに行く前に、大仏見物に行くことにした。
何本でも食べられそうな気がしてくる
どうやら友人は、この大仏がもっと辺鄙なところにあると思っていたらしく、今回は僕を連れて見に行くつもりではなかったらしい。ところが、思っていたよりもずっと近くにあったわけである。
川沿いを歩いていくと、大仏の目の前まで行く観光船の乗り場があり、それに乗り込んだ。どうやら大仏は川に面したところにあるらしい。
船が走り出してから10分、15分くらいだったろうか、目の前の崖に大きな大仏が現れた。
この大仏、唐の時代の713年に崖が彫られ始め、803年に完成したものとされている。このように長い歴史を持つ遺跡であることから、近くにある仏教の聖地・峨眉山(アー メイ シャン)とともに「峨眉山と楽山大仏」としてユネスコの世界遺産に登録されている。
今回は船に乗って川側から見たが、陸側から歩いて行くこともでき、崖に設置された階段を崖の上から降りていくと、大仏の足元まで行って見ることができる。ただし、帰りはまた階段を延々と上って崖の上まで行かなくてはならないようで、かなり大変そうである。
1200年以上も前に作られた大仏の大きさに感動しながら船から降りると、街中の古民家を再生した小洒落た喫茶店でゆったり休んだ後、また街に出た。まだ夕食にはちょっと早いということで、軽く何かつまむことに。四川の人たちは、ご飯の前や後に何かを食べるのが本当に好きである。
友人がネットで調べて入ったのは、鉢鉢鶏(ボー ボー ジー)の店。鉢鉢鶏とはいったい何なのか? 鉢に入った鶏肉なのだろうか。まずは写真を見ていただこう。
鉢鉢鶏は四川名物の小吃の一つで、麻辣味の汁が入った大きな丼に、串に刺さった小さな具を浸しておくもので、四川省の省都・成都などでは、食堂のテーブルの上によくこの丼が置かれている。
今から5年ちょっと前にアップした「中国美味紀行(四川編)―その10『麻辣味がビールのお供にピッタリ──鉢鉢鶏』」でも、成都の鉢鉢鶏について取り上げているので、興味のある方はそちらもご覧になっていただきたい。
成都では頼んだ料理が出てくるまでの前菜として食べることが多いが、ここ楽山では、この店のように鉢鉢鶏の専門店で食べるのも一般的なようである。
お勘定は食べた分の串の数で計算するシステム。野菜系の具には串が1本、肉系の具には2〜3本刺さっていて、串1本で0.5〜1元(8〜15円)ほどとなっている。
一つひとつの具が小さいので、何本でも食べられそうな気がしてくる。実際、この後は夕食を食べに行くというのにもかかわらず、3人で60本以上も食べてしまった。
お味のほうは、ほどよい辛さで食感もよく、思い出しただけで食べたくなってくる。ただし、美味しいは美味しいのだが、具が小さいので食材の味が麻辣味にかき消されてしまい、どの具を食べても味はそんなに変わらないというのが正直なところである。
店を出ると、後は宜賓に帰る前にどこかに夕食に行くことになっている。ホント、四川人はよく食べる。
佐久間賢三
中国在住9年5か月を経たのち、尻尾を巻いて日本に逃げ帰る。稼いだ金は稼いだ場所で使い果たすという家訓を忠実に守ったため(?)、ほぼ無一文で帰国。食い扶持を稼ぐためにあくせく働き、飲みに行く暇も金もない日々を送っている。日本の料理が世界で一番美味いと思っているが、中華の味も懐かしく感じる今日この頃。