吃貨美味探訪記 No.133(日本編その35)「上海の小籠包とはやはり違う南京名物──湯包」
- 2020/10/03 00:00
- 佐久間賢三
今回は、懐かしの湯包(タン バオ)が食べられる店があるというので食べに行ってみた。湯包は江蘇省の省都・南京(ナン ジン)の名物である。湯包といっても知らない人も多いかと思うが、簡単に言ってしまうと、上海名物の小籠包のようなものである。
蒸しあがるのを待つこと10分
「懐かしの」と書いたものの、南京に一度行ったことはあるが、実は南京で湯包を食べたことはない。かつて上海に住んでいた時に、ときどき食べていたのである。その時に食べていた上海の湯包については、以前に「中国美味紀行その33(上海編4)『小籠包との違いがよく分からないけど──湯包』」で説明しているので、ぜひご覧になっていただきたい。
というわけで、南京の湯包である。以前のコラムでも書いたが、南京の湯包と上海の小籠包の違いは、あまり明確ではない。筆者の感覚では、湯包のほうが皮が薄いという感じだが、これもおそらく店によって違うだろう。
店に入って湯包を頼み、待つこと10分。フタから湯気があふれ出てくる蒸籠がテーブルに運ばれてきた。上海の店では(そしておそらく南京の店でも)、大量の蒸籠が蒸し器の上に重ねて置かれ、上のほうの蒸籠はすでに蒸し上がっているので、頼んだらすぐに出てくる。しかし日本の場合は、それほど数が出るわけではないのだろう。注目が入ってから蒸し始めるので、それくらいの時間がかかってしまうようである。
店内の壁に貼られている説明書きによると、まずレンゲに湯包を一つ置いて、箸で皮を少し破って中のスープを出し、レンゲに溜まったスープを飲んでから、黒酢をつけていただく、というのが正しい食べ方らしい。
湯包は熱いうちに食べるのが醍醐味である。とにかく、まずはその食べ方をやってみた。スープをすすると、やや甘めの味付け。上海で食べたのはここまで甘くなかったと思う。そもそも上海周辺の江南エリアの料理は基本的に甘い味付けだが、内陸部の南京は上海よりもさらに甘い味付けのようである。九州の醤油が南に行くほど甘くなるというのと同じようなものだろうか。
たしかにやや甘めだが、これはこれで美味しい。スープをすすったら、箸で湯包をつかんで、黒酢につけていただいた。スープの甘みがなくなり、今度は黒酢のコクが湯包の味を濃厚にしてくれる。
とりあえず1個目は説明書きどおりに食べたが、筆者的にはスープをレンゲに出さずにそのまま口の中に入れ、熱々のスープをハフハフさせながら食べるのが好みである。ただ、最初のうちは熱すぎるので、黒酢にちょっとの間つけておいて少し冷まし、それからいただくとちょうどいい熱さで食べられる。
上海と南京では同じ湯包でもやはり味付けが違ったが、いずれにしても、上海での日々をつかの間思い出させてくれる味だった。
佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。世界的なコロナ禍の影響でしばらくは海外旅行に行けそうもなく、雑誌の海外旅行特集や昔の写真を見てウサを晴らそうとするも、かえってウップンが溜まるという悪循環の中で身悶えている。