吃貨美味探訪記 No.190(マレーシア編その31)「マレーシア食い倒れ旅5:かつて中国で食べた懐かしい味とマレーシアの味が一つの店に──客家料理&フィッシュカレー」
- 2023/02/18 00:00
- 佐久間賢三
マレーシア・イポー2日目の夜。いつもどおり現地の知り合いに連れられて、ご飯を食べに行った。小さな商店街にある小さなレストラン。とはいえ、味にうるさい現地の人が連れていってくれる店だけに、味は保証付きである。そこで食べたのは、マレーシア料理のフィッシュカレーのほか、かつて中国に住んでいた時によく食べていた懐かしい料理だった。
ラクサにはやっぱり太麺が合う
夜になる前の、その日の午後のこと。午前中にTasik Cermin(鏡湖)を見に行ってから家に戻ると、親戚のおばさんたちが来ていて、おしゃべりしていた。すると、そのうちの2人のおばさんが手招きしてきた。
「これから昼ごはんに行くから、一緒に来なさいよ」
まだお腹が全然空いていなかったが、お腹が空いていないうちから次のご飯に行くのは、イポーに来た時はいつものこと。おばさんが運転する車に乗って出かけることにした。
その前に買い物があるというので向かった先は、郊外にあるイオンのショッピングモール。日本のイオンである。イポーのイオンには、20年以上前に連れられて行ったことがあるような記憶があるのだけど、オープンしたのはいつなのだろう……と思ってちょっと検索したら、なんとイポーにはイオンのモールがすでに4軒もあった。結局、1号店がオープンしたのがいつなのかはネット検索では見つからず、20数年前に行ったモールがイオンだったのかどうかは分からずじまいだった。
さて、平日の午後だからモール内に人が少ないのかなと思いながら2階のテナントが入るエリアに行くと、多くの店舗がなくっていて、そこには「More exciting shop is coming soon」(だったと思う)と書かれた貼り紙が。でも、これだけたくさんの空き店舗があると、このままずっと空き店舗のままなのだろうなと、逆に貼り紙の言葉に虚しさを感じる。そんなわけで、廃れっぷりがかなり目立つイオンモールだった。
おばちゃんたちの買い物を済ませると、再び車に乗って街中へと向い、小さな食堂に入った。カレー麺とラクサの店で、前日にシンガポール空港でシンガポールラクサ(カレーラクサ)を食べていたので、それとは異なるイポーのラクサ(アッサムラクサ)を食べた。アッサムラクサについては〈吃貨美味探訪記 No.152(大馬編その12)「マレーシアで一番の大好物──Laksa(ラクサ)」〉で取り上げているので、興味がある方はそちらもご覧いただきたい。
この店のラクサのスープはやや甘めで、それほど好みではなかったが、問題は平麺。麺が平たいからか、濃厚なスープの味に負けてしまっている。平麺はやっぱりカレー麺向きで、ラクサには普通の太麺のほうが合うと思った。
客家料理を代表する2品
それから時間は一気にその日の夜に飛び、おばさん、おじさんたち合わせて5人と一緒に食べに行った、晩ご飯の話である。まず出てきたのが次の4品。
写真上の2品は、おそらく客家料理の梅菜扣肉(左 広東語:ムイ ツォイ カウ ヨッ)と釀豆腐(右 同:ヨン ダウ フ)。梅菜扣肉は梅菜という漬物と、茹でたり揚げたりした豚バラ肉を一緒に蒸した料理。豚の角煮のような味付けで肉が柔らかく、濃厚な味わいがご飯とよく合う。
釀豆腐のほうは、豆腐(または厚揚げ豆腐のようなもの)の中央に窪みを作り、そこにひき肉の餡を詰め込んで、揚げるか蒸すか炒めるかして、あんかけにした料理である。この釀豆腐は、かつて中国で客家人たちが餃子を作るのに小麦粉が手に入らず、代わりに豆腐を使って作ったのが始まりだという。なので中国の釀豆腐は、一つが上の写真のものより二周りくらい小さく、上に乗っている肉もこのようなそぼろ状ではなく、一つの小さな塊になって豆腐と一体化している。
ちなみにマレーシアで釀豆腐というと、一般的には別の料理を指し、豆腐ではなく野菜やパプリカのような唐辛子に入れた肉詰めのことである。それらはラクサの具としてもよく使われている(昼に食べたラクサにも入っている)。
梅菜扣肉も釀豆腐も客家料理を代表する料理で、筆者が中国の深圳に住んでいた時、会社の同僚たちと昼食でよく食べたものである。なので、食べるのは十数年ぶりかもしれない。ところで、いったい「客家」ってなんだ?と疑問に思う人がいるかもしれないが、ここで説明していると、ただでさえ長い文章がさらに長くなってしまうので、興味のある方はネットで検索していただきたい。
もう一つ、写真の左下は、素材不明の唐揚げ。ビールに合いそうな味だったが、イポーの知り合いたちは、ふだん酒を飲む人が少ないので、晩飯でもたいていはアルコール抜きである。右下はレタスを湯がいてタレ(おそらくオイスターソース)をかけたもの。サラダのような生野菜をあまり食べない中華系の人たちは、このように簡単に調理した野菜を食べることが多い。
そしてこの夜のメインはフィッシュカレー。マレーシアにはインド系の人が人口の1割弱いて、インド料理の店もけっこうあるのだが、この店は中華系なので、カレーはそれほど辛くない。それでもやっぱり日本のカレーとは味わいがかなり違うのだが、どう違うかは表現が難しいので、パスということで。
客家料理とフィッシュカレーの両方が一つの店で味わえるのも、マレーシアならでは。そういえば、以前、マレーシアの知り合いが日本に来た時に、お土産でフィッシュカレーのスパイスの素をいただいていた。作り方を見たら、準備する材料が日本では簡単には手に入らなそうなものが多かったので、そのままにしていた。近いうちにアメ横か大久保に行って素材を見つけて、作ってみることにしよう。
佐久間賢三
9年5か月に及ぶ中国滞在から帰国してきて早5年半以上。日本での生活をなんとか続けながらも、外国のあの刺激的な日々が恋しくなってきている今日この頃。コロナ禍の影響で3年間、海外に行くことができなかったが、ようやくマレーシアに行くことができ、次はどこに行こうかとあれこれ考える日々を送る。